「人生の約束」←ネタバレ

劇場で予告をみていて、台詞がいいなぁと思ってました。ネットレビューを読むかぎりでは評判も興行成績も芳しくありませんが、とてもいい映画だったし、泣けた。これはどこに視点をおくかで印象が違ってくるんだと思う。たぶん、どこかに感情移入できる登場人物がいる、はず。鑑賞後、まえを歩いていたおばさまたちが「なにをいいたいのかさっぱりわかんなかった!」といってましたけど、へ?なんで?と思ったし。なんだろう。うーん。そうだ。小説を読む人にはじんとくるお話なのかもしれない。
想像力、大切。

以下、ネタバレ。

新湊曳山まつりは、八幡宮の祭事にあわせて曳山(山車)13本が巡行する祭事です。曳山まつりは全国津々浦々長く受け継がれてきているけど(有名なのは、ねぶた祭りとか祇園祭とかあるけど)このお祭りもそのひとつ。歴史は古くて、室町幕府のころの神輿行列に曳山が加わったかたちで江戸時代から受け継がれてきた富山県を代表する都市祭礼。
この映画は、その長く受け継がれてきた「曳山」を四十物町が手放すところから始まります。四十物と書いて「あいもの」と読みます。漁師町だから四十物なのか。四十物とは「魚の塩漬けのこと」です。
四十物町の町内会長を西田敏行が演じています。総代を江口洋介(バリバリの漁師で血気盛んな漁師たちの親分的存在) その町にくる「よそもの」である都会臭ぷんぷんの男を竹野内豊が演じています。
この映画は、竹野内豊主演なのかな。
江口洋介は主演というほどには目立ってません。西田敏行のほうが目立ってる。
でも、私としては、このものがたりの主役は「航平」だと感じました。

会社を拡大することしか考えていない遣手で冷血なIT企業のCEO中原佑馬(竹野内豊)は、方針の食い違いから袂を分かつことになった、かつての親友、航平からの電話を無視しつづけていた。面倒だと思ったのかもしれない。いつでも話せる気でいたのかもしれない。この会社をともに起ち上げたかつての友とは3年近く音信不通でいたし、今更どんな話をすればいいんだという気持ちもあったのかもしれない。けれど、何度も表示される着信と、無言で切れた通話に胸騒ぎをおぼえたのか(病気ではないですか?という秘書の言葉に不安を感じたのか)航平に会いに富山まで出向いた先で、航平の死を知ることになる。
まさか死ぬとは思わないじゃないか。いまでも死んだなんて思えない。いつか戻ってくるような気がしてならない。ほんとに死んだのか、航平は。そういう台詞のひとつひとつがリアルに響きました。佑馬は、とくに取り乱さないし、表情が動くこともない、とりすましたまま淡々としているので、そういったことを現実として受け入れていない感じが伝わってきました。
この3年、航平はどうしていたのか。何があったのか。航平の娘に会うことで、航平には妻がいて、その妻を亡くしていたことを知り、親友であった筈なのに、実は何も知らなかったことにあらためて気づかされる佑馬。そのなかで、この町にきた航平がもう余命のない状態でいながら「最後に曳山とつながれたい」と思っていたこと。それが叶えられなかったことを知り、四十物町のものであった曳山を取り戻そうと西町の町長のところへ直談判しに行ったりする(曳山を買い取る。言い値をいってくれ。とかいうのは傲慢すぎたけど/笑) なんとかしたい気持ちに突き動かされたんだろう。
この時点で、佑馬は冷血人間ではなくなっていくんですが。
トップが恐怖政治のごとく部下たちを叱りつけてきたから部下たちが自分の失点を隠すために佑馬に隠れて採算合わせに不正取引に手をそめてしまうというのも、ありがちなことで。佑馬は、おまえたち、俺の会社を潰す気か!と怒鳴りつけてましたけど、それはもうまさしく「会社は社長だけのものではありません」という言葉で片づけられてしまう問題で。いくら起業した人物でも、代表取締役会で解任が決まれば、簡単にCEOの座から追放されてしまうのも、このての企業にはありがちなこと。
でも佑馬には「なにもかも失ってしまった」という悲壮感はありませんでした。
航平を失ったことのほうが大きかったんだなぁと思った。

俺のかわりになる優秀な社員ならいくらでもいるが、航平のかわりになれるようなやつはあまりいない。その航平が目をかけて後を託した男を松坂桃李が演じてたんですが、彼に会社に残って航平の意志を継いでくれと願ったりもする(航平の死を知るまえまでは、航平に似たこの若い社員を佑馬は疎んじていたんですけどもね)
実は航平の病気のことを知っていたと話すその社員(松坂桃李)…えーと、沢井か。沢井に「なんで教えてくれなかった」なんてことはいわない。そのときそれを聞いたとしても、心が動かされたとは思えないし。
航平の娘の瞳ちゃんは、父親の航平のことを「あの人」という。3年前まで会社一筋だった父親だし、娘の存在を知らなかった佑馬の態度からして、航平は妻子をほっぽらかしにしていたのかもしれない。
航平は瞳ちゃんともっと話したかったと思うよ。
といった佑馬に、航平が療養中に佑馬にあてて書きかけていた紙を渡す瞳ちゃん。その字はゆがみ力なく病状がかなり進んでいることを語る。途中できれていた言葉に「なんてつづいていたんだろうな」とつぶやく佑馬に、友だちだといいたかったんだと思います。と、語る瞳ちゃん。瞳ちゃんは、父親を「あの人」と呼ぶけれど、短い間に両親をつづけざまに亡くしてしまった女の子で。父親のことを知りたいという佑馬に、精一杯、父親の軌跡を見せるんですよ。言葉少なく。
航平はもう話すこともできない状態だった。
けれど、佑馬になんども電話をしていた。
声を、聞きたかったんだと思います…。と、いわれたときの佑馬の気持ちは想像するしかない。佑馬は、べつに「あのとき電話をとればよかった」なんてことは言葉にしないんだけど。話さなくても、ただ「どうした」と声をかけるだけでもよかったわけだから、じんわり痛い。何をしたって残されたものは悔いるものなんだけど。

町内会長の玄さん(西田敏行) 航平の義兄である鉄也(江口洋介) 妻の故郷にある曳山に思い馳せていた航平。
この新湊町は、この映画の監督・石橋冠さんの妻の故郷でもあるので、航平がある意味主役にみえるのも当然かもしれない。航平は、誰が演じたのかもわからないんですが(顔が大映しにならない) この物語の主軸にずっといる人物です。

ラストにて。
四十物町の提灯山をひくことになった佑馬が、ここが航平の場所だと鉄也にいわれてつかまる柱に「コウヘイ」と刻まれていることに気づいたり。壮大な提灯山の曳山まつりに感動したり。
約束を反故されて、もう四十物町の提灯山を見ることはできないと思っていた玄さんが、病をおして家の中から提灯山を見るところ(だんじり祭のように軒先に山車がめぐるのですよ) そこで足をとめて、囃子を玄さんの名をまぜて唱える男衆。それにあわせて、別町の男衆たちも玄さんの名を唱えたりする。坂道ではみんなで力を合わせないとうまく曳山をひくことができない。そのときに男衆にまじって佑馬が声をあげはじめるんですが、あれ、わかる。
神輿を担いだことのある人ならわかる。
最初は気恥ずかしくて声とかあげてないんだけど、疲れてきて、気合を入れるために叫ばずにはいられなくなる。力を入れるため、気を合わせるための噺しなんですよね、あれって。
曳山をひくことを「つながる」という。魂とか大地とかそういうものとつながる。それはつながってみないとわからない。という劇中の言葉とか、そういうのがラストに体現されていて、ようやく佑馬が顔をゆがませて泣きそうになるシーンに、泣かされました。
ああ、航平とつながったんだなと思った。

いい映画でした。久々にじーんとなりました。

いい映画だったねと母といいあいました。

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