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ビスホスホネート製剤 その8

もう「その8」なのか…と、びっくりしつつ。ほぼ年に1度、調べなおして、いまどうなっているのかなーと気にしているお薬なので、あらたな情報を追加しておきます。

と、そのまえに「あらまし」を。

歯医者では大変厄介なお薬として有名な薬、ビスホスホネート製剤。骨粗しょう症、ステロイド性骨粗しょう症、乳がんや前立腺がん、骨ページェット病などが適応症になっているお薬ですが、歯科では「顎骨壊死」をひきおこす可能性の高いお薬として、正直、なんとかしてほしいと願ってやまないお薬でもあります。まあ、なんとかしてくれとはいえ、必要な患者さんにはとても必要なお薬なので、むやみに「飲まないで」とはいえません(あたりまえだ)
ネットで調べてみたら、すごく怖い薬に思えてきたから飲むのやめよう。とかいって勝手に飲むのをやめるのはいけません。必ず主治医の先生に確かめてください。飲むのをやめたら骨折しちゃった!とかなってしまったら大変ですから、自己判断は禁物です。その一方で、ちょっとでも「おかしいな」と感じたことは、たとえ主治医が忙しそうにしていても時間をとって伝えなくてはいけません。
飲むと胃がむかむかするとか下痢するとか目がチカチカするとか関節が痛くなるとか、なんだか股が痛いとか、ふらつくとか、湿疹ができたとか、骨粗しょう症は長寿国日本の女性にとっては誰もがなる確率の高い症例であって、この層をターゲットにしたお薬はとても利益率の高い開発しがいのあるお薬になっていますので、処方される人が多い分、副作用報告も増えています。伝えることに臆しちゃいけません。
また歯医者にかかるときには必ず絶対に、この薬を「いつから」飲んでいるか、はっきりと伝えてください。また歯科医療従事者はこのお薬のことをいつも頭においておく必要があると思います。

お薬の一覧とか副作用のことは「ビスホスホネート製剤 その7」に詳しく書いてありますので、ここでは省略します。


さて新薬が発売されています。
発売されたのは2013年の1月です。承認されたのは2012年の秋でした。

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「ボナロン経口ゼリー35mg」
週に1回、水で内服。起床時。飲んだあとは30分横になってはいけないという注意事項は他のビスホスホネート系製剤と変わりません。つまりゼリータイプだけど水なしで服用してはいけないのです。食べちゃダメ。って、かえって飲みづらくない? ゼリーを水で飲む。想像すると、もよもよする…けど、水で飲んでください。

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このお薬の副作用として「顎骨壊死」以上に問題視されているのは「食道潰瘍」です。食道がんとの因果関係はまだエビデンス(根拠)が不十分とされています(2012.9/ EU EMA )が、口の中や食道にこのお薬が停滞してしまうと強い刺激になりますので、ゼリータイプだからって水なしで口のなかに入れたくなってしまっても「必ず水で飲む」「飲んだあとはしばらく横にならない」 これだけは絶対に守らなくてはいけないことです。
なので体を起こしておくことのできない人は飲んではいけません。
そもそも寝たきりの方には処方できないお薬ですけど。

そして、最近、副作用のところで見かけるようになったのは、
注射剤Prolia「プロリア」(一般名 denosumab「デノスマブ」)です。完全ヒトモノクローナル抗体(といってもよくわからんですが)2010年に米国FDAで「閉経後女性の骨粗しょう症治療薬」として承認されたお薬です。日本では未承認なのかな。このお薬も骨代謝に関わるお薬なので、ビスホスホネート製剤ではありませんが、ビスホスホネート製剤と同じ副作用が報告されつつあります。ビスホスホネート製剤と違って半年に1度の注射ですむので処方される側は楽になります。このお薬は2011年には前立腺がんや乳がんの方の治療の過程で骨折リスクの高い場合にも用いられることが承認されました(米国FDA)

国内では、がんの骨転移や、多発性骨髄腫で生じる骨病変への適応薬として同成分のもの(抗RANKLモノクローナル抗体/デノスマブ)が「ランマーク」という商品名で製造されています。骨粗しょう症に対しては検証中で、まだ適応症としては認められていません。

他にも日本ではまだ未承認で承認に向けて製薬会社が開発しているお薬がいくつかあります。ボンビバ(ビスホスホネート製剤/イバンドロネート) アクラスタ(ビスホスホネート製剤/ゾレドロン酸/年1回注射剤) 

ビスホスホネート製剤ではない骨粗しょう症治療薬も一応。

プロテロス(ラネル酸ストロンチウム/欧州/重篤な副作用があるそうですが詳細はよくわかりません/米国FDA未承認/日本未承認)

ビビアント(バゼドキシフェン酢酸塩/2010年10月~日本で販売開始/閉経後骨粗しょう症治療薬/選択的エストロゲン受容体のため副作用は血栓症などエストロゲンと同じです。同系のお薬に「エビスタ」があります)

フォルテオ(テリパラチド酢酸塩/遺伝子組換えで作ったヒト副甲状腺ホルモン剤/合成ペプチド/1日1回注射剤/生涯約2年間(18ヶ月~24ヶ月)のみ投与/骨芽細胞の働きを強めて骨を増やします/重篤な副作用は少ないが患者さん本人が太ももに毎日注射しなくてはなりません)

テリボン(テリパラチド酢酸塩/ヒト副甲状腺ホルモンのN端側の1-34ペプチド断片)/週1回注射剤/生涯約1年半(72週間)のみ投与/重大な副作用はアナフィラキシー/他のテリパラチド薬からの乗り換えでの安全性は確立していない。処方上限もまだ定められていない)2013年5月現在

というように、骨粗鬆症治療薬はこれからもどんどん新薬が展開されていくと思います。それだけ骨粗しょう症になる女性が世界的にとても多いということです。

で、問題のビスホスホネート製剤ですが…

顎骨壊死にいたるリスクの割合が、増えてます。これからも増えつづけるのかもしれません。初期のころは10万人に1件くらいだとか聞いた気がするんですけど、日本国内での発生頻度は「経口薬で0.01%~0.04%」って。%だとわかりづらいけど、1万人に1件の割合ってことになるのかな。抜歯するとこの頻度が「0.09%~0.34%」にあがります。えーと、多めに見積もると1000人に3件ってこと? リスク高すぎる。ぇ、ほんとなの、これ(失敬ですみません。出典は「日本口腔外科学会」です/2008年) 薬を中断すれば頻度は下がります。
FDA(米国)では既往症などのリスクファクターを考慮しない数値として「952人に1人」の割合で発生する副反応としています。

顎骨壊死も生活の質を下げ、審美的にも問題のある状態になってしまいますが、大腿骨の非定型骨折もかなり問題になってきています。顎骨壊死と非定型骨折は作用機序が同じなのです。(口の中だと感染しやすいので感染症を発生して壊死してしまうんですが) 骨折すると骨代謝がうまくいかないため治癒が難しく、骨に入ったひびが治癒しないまま骨折にいたるケースが非定型骨折といわれています。骨代謝が阻害される為、正常な代謝がおこなわれず、古い骨が蓄積されて大理石のような硬い骨になり、かえって衝撃に弱くなってヒビなどが入りやすくなるんでないかという報告は何年もまえからされてました。また5年以上の投与には意味がないのではないかということも2004年から学会発表されています(フォサマック/海外の論文ですが) 上記のフォルテオやテリボンに投与制限がついているように、ビスホスホネート製剤もそのうち制限がつくようになるかもしれませんが、米国FDAの後追いばかりしないで、日本PMDA独自でそういう発表したっていいんじゃないのかと…!
早いところ使用年数制限してくれと願ってます。
というか、整形の先生は安易に処方しないでほしいなぁと。
必要な人には必要だけど、ちゃんと経過観察してほしいなぁと。
とくに大腿骨はちゃんと調べてほしいなぁって。そういう保険点数がないのかな、もしかして? 大腿骨に関しては、ステロイドを服用している人には「大腿骨の骨頭壊死」を引き起こすリスクもあるんだから、定期的に大腿骨は調べなくちゃいけないと思うんですが…… 保険ルール的に厳しいのかなぁ。医科のことはよくわからんので、すみません。たぶんもっと他に経過を観察しなくてはならない重要なことがたくさんあるから、大腿骨のような外科的にことは後回しにされてしまうの、かな…?
顎骨壊死は歯科(口腔外科)だし。
うまい具合に連携できたらいいのになと思うんですけども、ね。

ということで、ちょっとした追加情報でした。

ちなみにビスホスホネート製剤の連続投与の注意喚起については米国FDAの諮問委員会で賛成17・反対6で支持されたけど、具体的な年数制限や休薬期間についての判断は見送られています(2011年9月)


「ビスホスホネート製剤のこと」
「ビスホスホネート製剤 その2」
「ビスホスホネート製剤 その3」
「ビスホスホネート製剤 その4」
「ビスホスホネート製剤 その5」
「ビスホスホネート製剤 その6」
「ビスホスホネート製剤 その7」

「ビスホスホネート製剤 その9」
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